2023年、世界一の自動車輸出国の座を日本から奪い取った中国ですが、日本にいると一般の消費者はほぼ中国車のブランドの名前をあげることはできないでしょう。実際に海外市場で日本車の脅威になり得るようなメーカーはどのようなものがあるのでしょうか。
Motor1.comに海外で成功する可能性が高い中国車ブランド5つが紹介されていました。その5ブランドを独自に調べてみましたので早速見てみましょう。
MG
日本で耳にすることはほとんど無いかもしれませんが、MGは中国外で最も成功しているブランドです。2022年には中国外で33万台の販売を記録して、中国外で最も売れた中国車ブランドとなっています。
といってもMGの歴史を辿ればイギリスが発祥です。MGはモーリスガレージの頭文字で、初代ミニなどでも知られていたMGローバー社が2005年に経営破綻したのをきっかけにして最終的にMGブランドは中国の上海汽車(SAIC)の所有となりました。上海汽車の買収後にイギリスでの自動車生産も終了してデザインや開発も大部分が中国で行われる完全な中国車となっていますが、2011年に16年ぶりの新型車MG6を発売して以降快進撃を続けています。
欧州市場では2023年上半期に104,293台を販売し、すでにマツダ(92,733台)、ミニ(91,660台)、スズキ(90,469台)の販売台数を超えています。個別の車種で見ても、最量販モデルのMG4は2023年上半期の欧州BEV販売ランキングで6位となる好調ぶりで、これより売れているEVはテスラのモデル3とY、フォルクスワーゲンのID.3とID.4にフィアット500だけと強力なライバル相手に大健闘を見せています。
そんなイギリスブランドの皮を被った中国車といえるMGのラインナップを見てみましょう。
MG3
MG3は、全長4055mm 全幅1729mm 全高1509mmの車体に1.5リッターエンジンと5速マニュアルを組み合わせた105馬力のスモールハッチバックです。
内外装ともにオーソドックスなデザインで装備も簡易的なので、イギリスではエコノミーカーとして人気があります。日本の軽自動車的なポジションと言えるでしょう。
MG4
MG4は2022年に欧州市場をメインターゲットとして登場した5ドアハッチバックの電気自動車です。
全長 4287mm 全幅1836mm 全高1512mmのボディーに、245馬力のモーターが採用されています。トロフィーと呼ばれるトリムでのバッテリー容量は77kWhあり、520kmの走行レンジがあります。
内装は、7インチのデジタルメータークラスターや10.25インチのサイズがあるフルタッチスクリーン式のインフォテインメントシステムの採用など、先進的デザインとなっています。
MG iSMARTと呼ばれるコネクテッドサービスも充実しており、Bluetooth通信によるデジタルキーやスマートフォンからリモートでエアコンの操作ができるなど下手な日本車よりも充実した機能を備えています。
このデザインと装備で中国国内での販売価格は約280万円とかなりの競争力を見せています。
MG5
MG5は全長4675mm 全幅1842mm 全高1473mmのボディーに1.5Lエンジンと5速マニュアルトランスミッションが組み合わせられる小型セダンです。中国での価格は約130万円からとなっており、車体こそかなり立派な大きさですがエントリーモデルの位置付けです。
東南アジアやオーストラリア、メキシコなどで中国と同じモデルが売られていますが、市場によってはMG GTとも呼ばれています。またヨーロッパ市場ではSAICグループの全く別の電気自動車をMG5の名前で販売しています。
MG6
MG5の一つ格上となるモデルがMG6です。
SAICに買収された後のMGブランド再スタート時に、最初に登場したのがこのモデルでした。5ドアのファストバックスタイルで、ガソリン車に加えてPHEVも用意されます。
現在中国で売られているのは3代目となるモデルで、価格は10万元で日本円にして約200万円となっています。181馬力の1.5リッターターボエンジンに7速デュアルクラッチトランスミッションが組み合わされます。ボディーサイズは全長4704mm 全幅1848mm 全高1466mmです。
コックピット周りもデジタルメータークラスターが採用されインフォテインメントシステムもタッチパネル式と中国で流行りのデザインになっています。
MG7
MG7は、中国市場向けの高級ファストバックスポーツサルーンです。価格帯こそ全く異なりますが、ポルシェのパナメーラ辺りを意識したモデルと言えるかもしれません。257馬力の2リッターエンジンに9速トランスミッションが採用され、ボディーサイズは全長4884mm 全幅1889mm 全高1447mにもなります。それでいて価格は240万円からとなっています。
内装も力が入っており、メータークラスターとインフォテインメントシステムが一体化されたフルデジタルディスプレイが採用され、画面サイズは33インチと巨大です。スイッチ類も最小限に抑えられておりモダンなスッキリしたデザインになっています。また、前方ウィンドウに速度やナビなどが表示されるARヘッドアップユニットも採用さえれるなど、最先端装備には抜かりがありません。
MG ONE
MG ONEは、1.5LターボエンジンにCVTが組み合わされたコンパクトクロスオーバーです。
ボディーサイズは全長4579mm 全幅1866mm 全高1617mmとなり、スポーティー仕様のアルファとハイテク装備にフォーカスしたベータという2つのタイプが用意されます。
コックピット周りは最新のトレンドに合わせたデザインになっており、30インチのディスプレイにフルデジタルのメータークラスターとタッチスクリーンのインフォテインメントシステムが採用されています。これで価格は約200万円からとなっており、非常に競争力が高いです。
MG ZS
現在MGの最量販モデルとなっているSUVがZSです。中国を飛び出してタイやインド、オーストラリア、中東など世界中で販売されています。
MG ONEよりも一つ格上の位置付けとされるSUVであり、全長4323mm 全幅1809mm 全高1653mmのサイズに1.5LエンジンにCVTが組み合わせられます。欧州ではバッテリーEVのMG ZS EVのみが販売されており、130kWのモーターにバッテリーは72.6kWhと51kWhの2種類が用意され航続距離はそれぞれ320kmと440kmあります。
2023年上半期には85,279台が中国から輸出され、同期間に中国から世界に輸出された車種としては第二位と、テスラのモデルYに次ぐ量を海外輸出することに成功しています。
ガソリンモデルの中国での価格は、180万円から。EVモデルのイギリスでの価格は、470万円からとなっています。
MG HS
中国名は領航(リンハン)。MGの最上級SUVです。
全長4610mm 全幅1876mm 全高1685mmのサイズに1.5リッターターボエンジンと7速デュアルクラッチミッションが組み合わされて最高出力は173馬力になります。
インテリアもしっかり12.3インチの大型デジタルメータークラスターと10.1インチタッチスクリーンのインフォテインメントシステムが採用され、中国での価格は200万円からとなっています。
なおプラグインハイブリッドのMG EHSもあり、10速トランスミッションと90kWのモーターが組み合わされシステム最大出力は258馬力にもなります。16.6kWhのバッテリーが搭載され、EVモードで52kmの走行が可能です。プラグインハイブリッドモデルのイギリスでの価格は580万円からとなっています。
Cyberster
サイバースターは、イギリススポーツカー史上に残る伝説的名車であるMGBロードスターに着想を得たモデルです。
全長4538mm 全幅1913mm 全高1329mmのボディサイズで、544馬力の出力と725Nmのトルクで0−100加速は3.2秒となります。バッテリーは77kWhが採用され走行可能距離は580kmです。
価格は640万円からとなっており、このような少量しか売れないであろうモデルが出てくる辺りは、バブル期のホンダNSXやトヨタスープラにも通じるブランドの勢いを感じることができます。
ちなみに、EVのロードスターであるサイバースターという名前は、テスラのEVピックアップトラックであるサイバートラックと同じ名付けロジックですが、両者は特に関係はないようです。
BYD
以前の記事で紹介した通り、中国国内ではすでに自動車販売台数シェアNo.1となっているBYD。また電気自動車ではテスラを抜いてEV販売台数世界一位となっています。日本をはじめ世界中への進出を加速している中国車ブランドです。
つい先ほど紹介したMGは、ラインナップにガソリン車も多くまだブランドとして電動化を進めている途上といった印象でしたが、BYDはすでにBEVとPHEVのみを生産する電動車専業メーカーとなっています。
BYDはもともと電子製品の生産で成功した会社で、例えばアップルのiPadの半数ほどはBYDが生産を請け負っているようです。自動車へは異業種から新規参入した格好です。またバッテリー製造メーカーとしても成功しており、スマートフォンや電気自動車向けリチウムイオン電池で高シェアを持っています。
BYDの社名は、かつて会社があったYadiという道の名前にBiをつけてBiYaDiからBYDと名付けられたそうです。YaDiにBiを足した理由は、展示会などでたくさんの会社名がリスト化された際に、アルファベット順で上の方に表示されるためだということです。この辺りはアリババやアマゾンも同じようなストーリーを社名の由来にあげており、小さな会社が目立つために意外と有効な作戦なのかもしれません。
現在はBYDの頭文字を逆に使ってBuild Your Dream(夢を叶えろ)というスローガンを使っており、一部の車種のリアエンドにはこのBuild Your Dreamの文字プレートが付いています。
ちなみにBYD創業者の王伝福(Wang Chuanfu)氏は以前メディアのインタビューで、BYDの本当の意味はBring Your Dollars(金を持って来い)ですよ、と冗談混じりに答えたこともあるとか。事実BYDの成功は彼に巨万の富をもたらしたことでしょう。
そんなBYDはラインナップを王朝シリーズと海洋シリーズという2つのシリーズに分けています。早速どんなクルマがあるのか見てみましょう。
王朝シリーズ
元
元(Yuan, ユアン)はe-Platform 3.0と名付けられた新世代EVプラットフォームで開発された最初のSUVです。BYDが世界進出することを目的に開発されたコンパクトSUVのEVで、ボディサイズは全長4455mm 全幅1875mm 全高1615mmです。
日本を含めた中国国外のマーケットではAtto3の名前で販売されています。
中国国内での価格は約270万円からとなっています。
宋
BYDはファミリーミニバンからハイテクEVクロスオーバーまで様々なタイプの車種に宋(Song, ソン)の名前を使用しています。トヨタのカローラシリーズに近い感覚だとお思います。
宋 ProはPHEVのSUV。宋 MaxはPHEVのミニバン。宋 LはクロスオーバーEVです。
漢
全長4995mm 全幅1910mm 全高1495mmのミッドサイズ高級セダンが漢(ハン)です。漢はほぼ同じエクステリアとインテリアデザインでBEVに加えてDMと呼ばれるPHEVバージョンが用意されています。
価格は、BEVで約420万円からPHEVで約380万円からとなっています。
唐
唐(Tang, タン)は、BEVとPHEVが選べる7人乗りのSUVです。
ボディサイズは全長4870mm 全幅1950mm 全高1720mmで、価格はBEVが500万円からPHEVが420万円からとなっています。
秦
秦(Qin, チン)は、初代モデルが2012年に登場した中国国内での販売台数ランキングTOP10常連のセダンです。
価格はBEVモデルが約260万円から、PHEVモデルが約200万円からという価格設定になっています。
海洋シリーズ
Seagull
2023年に街乗り向け小型ハッチバックとして登場したのがシーガルです。
全長3780mm 全幅1715mm 全高1540 mmというサイズに74馬力のモーターが組み合わされ、価格は150万円からとなっています。
Dolphin
シーガルよりも一回り大きいコンパクトハッチバックがドルフィンです。
日本にも輸入されている同モデルですが、中国国内での価格は約235万円からとなっています。
Seal / Seal U (Song plus)
シール(Seal)は、テスラモデル3とモデルYに対抗するモデルですが、BYDのラインナップの中でも少しややこしいブランディングがされています。
基本的にセダンとSUVが用意されておりそれぞれにBEVとPHEVが用意されているモデルです。デザインも全モデル統一感があるのは良いのですが、本国中国ではSUVは宋 Plusの名前で販売されており王朝シリーズのモデルであるかのようなネーミングになっています。ところが実際には宋 Plusは海洋シリーズに属している扱いになっています。また、海外では宋 Plusの名前は使わずにSeal Uという名前で販売されており、このモデルがセダン版SealのSUVバージョンであることが分かりやすいネーミングになっています。
価格はSealのPHEVが約335万円からBEVが約380万円からです。SUVはPHEVが約320万円からEVが約340万円からとなっています。
Destroyer05
BYDの海洋シリーズのモデルはこれまで、カモメ(Seagull)、イルカ(Dolphin)、アザラシ(Seal)など可愛らしい海の生物たちからモデル名を取ってきましたが、この駆逐艦05(Destroyer05)というPHEVのセダンから軍艦ラインという少し物騒なネーミングのモデルラインが登場しました。
駆逐艦05は主にこれまでよりも若いユーザー層をターゲットにしており、攻撃的なモデル名からも日本でいうオラオラ系ミニバンのような存在と言えるでしょう。
中国国内での価格は200万円からとなっています。
Frigate07
駆逐艦05の次に登場した軍艦ラインのモデルがこの護衛艦07です。BYD海洋シリーズのラインナップを充実させる役割を持ったPHEVの5シーターSUVで、BYD X DREAMというコンセプトカーの量産版に当たります。
価格は400万円からとなっています。
トヨタ bZ3
トヨタが中国で販売しているBEVのセダンであるbZ3にもBYDは深く関わっています。
bZ3はBYD Toyota EV TechnologyというトヨタとBYDの合弁企業にトヨタの中国現地合弁企業である一汽トヨタも参加して開発されたモデルです。車両プラットフォームこそトヨタのe-TNGAを採用していますが、BYDがEVの基幹部品であるバッテリー・モーター・電子制御ユニットを供給しており、中身はほぼBYDと言えます。bZ3はBYDがEV作りにおいてトヨタも認める実力を持っていることを証明しています。
Zeekr
Zeekr(ジーカー)は、中国で最初に非国営の自動車メーカーとして認定されたGeely(吉利、ジーリー)グループの高級EVブランドです。吉利傘下になっているスウェーデンのボルボやイギリスのロータスとプラットフォームをシェアするなど、欧州ブランドの力をテコにして世界進出を進めるのは上海汽車(SAIC)がMGブランドをうまく使って海外進出を進めているのと似た世界戦略といえます。
ブランド名ZeekrのZEはZero、EはElectric・Evolution・Era(電気・進化・時代)、KRは電気によって発光する物質であるクリプトンガスの元素記号Kr、からそれぞれ取っています。
早速ラインナップを見てみましょう。
Zeekr 001
Zeekr最初のモデルが001です。当初は吉利とボルボの合弁会社であるLynk&Coのコンセプトカーとして登場しましたが、量産にあたってZeekrブランドのモデルとなりました。ボルボとプラットフォームをシェアしており、ポールスター4や5といったモデルが共通のプラットフォームで開発されています。
エクステリアは、シューティングブレークスタイルで若干ポルシェを彷彿とされるデザインになっています。サイズは全長4970mm 全幅1990mm 全高1560mmです。
インテリアはテスラをかなり意識したデザインになっており、コックピット中央の15.4インチタッチパネルでエアコンなどを含めたほぼ全ての機能を操作します。テスラでも全てタッチパネルに押し込むデザインが使いやすいかどうか賛否が分かれていますが、先進性という意味ではスマホ的な使い勝手を実現できているようです。
EVとしての性能は、デュアルモーターで536馬力を誇り140kWhのバッテリーを選択した場合の航続距離は1000kmを超えます。内外装の高級感とこれだけのスペックを達成して価格は540万円からとなっています。
Zeekr 007
Zeekr 007は2024年発売予定のフラッグシップEVです。Zeekrとして4つ目のモデルにして初のセダンとなります。
車両のサイズは全長4865mm 全幅1900mm 全高1450mmと日本車でいえばトヨタのカムリやホンダのアコードに近い大きさです。バッテリーは800Vの高電圧システムでスタンダードレンジが688km、ウルトラロングレンジは870kmもの航続距離があります。充電は500kWの超大容量充電に対応しており、15分で500km走行相当の充電が可能とされます。さらにモーターには次世代半導体として注目されるシリコンカーバイドを採用。出力はシングルモーター版が415馬力で、デュアルモーター版が636馬力にもなり0-100km加速はわずか2.84秒と、あらゆる面で次世代EVを体現するスペックになっています。
運転支援システムも新世代の技術を先取りしており、フロントにLiDARセンサーが採用されるほか12個のカメラ、5個のレーダー、12個の超音波ソナーを備えて車の周囲360度を監視します。またこれらのセンサー群の情報を統合し運転支援を実現する頭脳としてNVIDIAの半導体Orinが採用されています。
インテリアに関しても、15インチのOLEDディスプレイや35インチのARヘッドアップディスプレイなど豪華ですが、特に目を引くのはフロントヘッドライト上部に1711個のLEDであしらわれた90インチの横長なディスプレイが装備され、インフォテインメントシステム上からこのディスプレイに好きな表示をさせることが出来る点でしょう。
見方によっては、ソニーホンダモビリティのAFEELAコンセプトカーで示されたような機能をすでに量産まで持っていっていると言えなくもありません。これだけのスペックで価格は460万円からと発表されています。
Zeekr 009
日本で言えばアルファードに相当するであろう高級EVミニバンがZeekr 009です。Zeekrブランドの車種第二弾として登場したこのモデルは、ボルボのEM90とプラットフォームをシェアしています。
もともと後部座席の広さが売上に大きく影響する中国市場において、高い人気を誇っていたトヨタのアルファードに対抗するモデルとも言えます。
3列2座づつの6人乗りで、車体は全長5209mm 全幅2024mm 全高1848mmとアルファードよりも大きくベンツのVクラスにより近い大きさです。また、フロントグリルには154個のLEDが埋め込まれており光り方を自由に変えられます。やはりこの手のクルマは目立ってこそ意味があるということでしょう。
EVの性能としては、536馬力のモーターが採用され116kWhと140kWhの2種類のバッテリーが用意されています。航続可能距離はそれぞれ702kmと822kmを誇ります。
価格は安いグレードでも1000万円からとなっていますが、EVではないトヨタのアルファードも中国では1000万円を超える価格設定になっており、Zeekr009の競争力は高いと言えるでしょう。
Zeekr X
Zeekr XはボルボのEX30とプラットフォームをシェアするコンパクトSUVのEVです。
全長4450mm 全幅1836mm 全高1572mmとコンパクトなボディーに272馬力のシングルモーター版と422馬力のデュアルモーター版が用意されます。
バッテリーは、66kWh 116kWh 140kWhの3種類が用意され、140kWh版では822kmもの航続可能距離があります。
他のZeekrのモデルと同じく、物理スイッチ類はほとんどなく操作系はタッチパネルに集約されています。小型車ではあるものの内装は高級感があり、ヤマハ製のスピーカーが13個も搭載されるほか14.6インチのセンターディスプレイは助手席側にスライドしてエンタメを楽しめる設計になっています。
価格はバッテリーが66kWhのモデルで420万円からです。
自動運転タクシー
Zeekrは、Googleからスピンオフした自動運転会社ウェイモ向けに、無人自動運転車両を提供することも発表しています。車両をZeekrが提供し、ウェイモが開発した自動運転システムが搭載されます。
日本では、ホンダがGMと協業してクルーズの無人自動運転車両を使ったロボットタクシーサービスへの参入を発表していますが、ウェイモがロボットタクシーで日本に進出してくる際には、もしかしたらZeekrの車両が使われるといったこともあるかもしれません。
NIO
電気自動車ブランドが乱立する中国でも、特に中国版テスラと言われるのがNIO(ニオ)です。
ニオは中国の上海を本拠地とし2014年に設立された新興EVメーカーです。
中国ではもともと第一汽車や上海汽車に代表されるように、国家主導で自動車メーカーが成長してきた歴史がありますが、NIOは農家の子供として生まれた創業者が立ち上げたインターネット会社を売却し、そのお金を元手にNextEV incという名前のEV会社を始めたところから事業が始まっています。当初は電気自動車のレースであるフォーミュラーEに参戦していましたが、量産型EV車の開発に進出してブランド名をNIOとしたのが、現在は社名NIOの始まりです。
この辺りのストーリーは、イーロン・マスクがペイパルを売却してテスラのCEOとなった点や既存の自動車メーカーとは別の流れで新興EVメーカーを立ち上げた点など、中国版テスラと呼ばれるのも納得の共通点といえます。
そんなNIOのラインナップは、セダン・ワゴン系のET、SUVのES、クーペのECという大きく3つのシリーズに分類されています。
車両は初めから自動運転を見越したデザインになっており、センサーとしてLiDARも標準搭載されています。また、ブランドとして内外装ともにデザインは徹底的に一貫性を持たせており、どの車種も同じテイストを採用しています。
早速NIOのラインナップを見てみましょう。
ET5 / ET5T
テスラモデル3の競合車種に当たるEVのセダンとツーリングワゴンが、ET5とET5Tです。
全長4790mm 全幅1960mm 全高1499mmのボディに480馬力のモーターが搭載されます。バッテリーは75kWhと100kWhが用意されており、航続可能距離はそれぞれ550kmと700kmです。なおNIOは航続距離1000kmを実現する150kWhの容量を持つ半個体電池を導入する予定であることも発表しています。
ET5の価格は75kWhのバッテリー容量で600万円からとなっていますが、バッテリーをレンタル扱いの契約にすることで車両本体価格が140万円値下げされて460万円で購入することができます。その際はバッテリーのレンタル代として毎月2万円を支払うことになります。
インテリアは最新EVのトレンドになっているフルデジタルコックピットになっており、センターコンソールに設置された12.8インチのアクティブマトリックス式有機ELディスプレイ(AMOLED)を使ってタッチスクリーン上でほとんど全ての機能を操作します。
そのほかダッシュボード中央にはちょうど人の顔のような丸型ディスプレイが設置されており、これがNOMIと名付けられたAIアシスタントとして乗員と会話し、ボイスコマンドでナビや音楽などのメディアをコントロールしたりできるようになっています。
NIOはAIアシスタントNOMIを開発した理由として、新時代の自動車体験を作りたかったと説明しています。何もない空間に向かってドライバーが声を出す音声認識だけでは体験として不自然であり、ディスプレイにキャラクターを表示させたとしても他の情報が表示されればすぐに消えてしまうため、常にサポートされている感じが薄くなります。そのため、人の顔のようなキャラクターが常に一緒にいてくれるというコンセプトは、クルマと人が長期的な関係性を構築する上で必要だったということです。
もちろん、感情エンジンで乗員の感情を理解したり、音声認識技術で言葉の意味を理解し会話エンジンで自然な返答をするといった技術があってこそ成立するコンセプトです。これらNOMIを支えるテクノロジーはOTAアップデートで常に最新の機能に更新されます。
実際のクオリティーは分かりませんが、このような先進的なコンセプトのEVがすでに量産されているというのですから日本車にとっては驚異的です。
ET7
ET7は、テスラのモデルSと競合するEVのセダンです。全長5101mm 全幅1989mm 全高1505mmと全長5メートルを越える大型セダンになっています。
バッテリーは、75kWhのモデルで航続可能距離が530km、100kWhで765kmとなっています。また、150kWhの半個体電池も用意され航続距離は1050kmとなっています。モーターの出力は644馬力です。
エクステリアとインテリア共にET5同様NIO共通のデザインとテクノロジーが採用されています。
価格は860万円からです。また、バッテリーレンタルで本体が値引きされるのもET5と同様です。
ES6
ES6はNIOとしては最小サイズのSUVですが、ボディサイズは全長4854mm 全幅1995mm 全高1703mmと一般的には中型SUVに分類される大きさです。SUVでもセダン同様にNIOブランドで内外装ともに一貫したデザインを貫いています。
バッテリーと航続距離は、75kWhで航続距離が490kmと100kWhで625km。また150kWhで930kmとなっています。
価格は680万円からです。
ES7
大型セダンET7のSUVバージョンと言えるEVが、このES7です。
全長4912mm 全幅1987mm 全高1720mmの車体サイズはES6とそれほど違いがないですが、高級感はES7の方が上になっており、価格も880万円からとES6よりも高価です。
航続距離は、バッテリー容量75kWhで485km、100kWhで620km、150kWhで930kmとなっています。
ES8
NIOの最上級プレミアムSUVがES8です。
全長5099mm 全幅1989mm 全高1750mmのボディサイズを持つ7シーターのフルサイズSUVで、航続距離は75kWhのバッテリーで465km、100kWhで605km、150kWhで900kmとなっています。
価格は最上級SUVらしく1000万円からです。
EC6
EC6はSUVのES6をベースとしながらもリアエンドが流れるようなクーペ風のデザインになっているモデルです。
全長4849mm 全幅1995mm 全高1697mmのサイズに、ETシリーズやESシリーズ同様に一貫したNIOのブランドデザインが用いられています。
航続距離は、バッテリー容量75kWhで495km、100kWhで630km、150kWhで935kmです。
価格は720万円からとなっています。
EC7
EC7もSUVをベースにリアエンドがクーペ風のデザインとなっているモデルです。
車体サイズは全長4968mm 全幅1974mm 全高1714mmで、航続距離はバッテリー容量70kWhで490km、100kWhで635km、150kWhで940kmです。
価格は920万円からとなっています。
Wuling/Baojun
ウーリンとバオジュンについて詳しくは、下に貼った以前の解説記事をご覧ください。
日本車王国となっているインドネシアを中心とした東南アジア市場への進出を強めているほか、株主であるGMのシボレーブランドを通じて南米などへの進出を進めています。
まとめ
- 欧米のブランドをうまく使い戦略的に中国メーカーであることを隠すか、BYDやNIOのように独自技術に強みを持っているか、大きく2つの世界進出戦略が見て取れる。
- 中国車と聞くと価格が非常に安いモデルのイメージが強いが、高級なモデルはすでに日本製高級車を超えるような価格帯となっている。
- EV化が進んでいるだけでなくデジタル化が日本車よりも相当進んでいる印象がある。EV化はハイブリッド車の技術を使って日系メーカーがいずれ追いつけるイメージを持てるが、日本という国自体が不得意とするデジタル化にどう対抗するのか日本車の勝ち筋は見えない。
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