AppleのEV予想CG。苦戦する理由、製造委託先など、プロジェクト・タイタンまとめ。

北米動向

アップルが自動車販売に参入するという噂は、以前よりメディアでたびたび報道されています。

アップルの他の製品同様に設計はアップルが行い製造は外部企業に委託すると言われており、「アップルカー」の製造を誰が行うのかについても注目が集まっています。

いつも通り秘密主義を貫いているアップルは、これまで一度も公式に自動車開発を行っていることは発表していないため、すべての情報は非公式に関係者からリークされた情報です。

アップルはどのようなクルマを開発しているのでしょうか。

プロジェクト・タイタンとは

アップルが自動車分野への参入を検討するために「プロジェクト・タイタン」と呼ばれる極秘の計画を開始したのは、2014年頃と言われています。

当初プロジェクト・タイタンでは、2020年頃までにアップルがハンドルもペダルもない電気自動車に独自の自動運転技術を搭載し自動運転レベル5の達成を目標にしていたとされます。

プロジェクトにはアップルの他に元テスラやフォードのエンジニアたちが雇われ、アップルと自動車業界から連れてこられたスタッフの混成チームを作り、ピーク時には1000人ほどがプロジェクトに関わっていたといいます。

アップルカー予想CG。アップルが作るからには細部まで素材にこだわりシンプルなデザインにまとめると思われる。

プロジェクトは難航

ところが誰もが知っての通り、当初の発売目標時期とされた2020年を過ぎてもアップルカーが実際に発売される様子は全くなく、計画は難航しているとされます。

実際、プロジェクトを率いていた幹部はすでに複数回交代しています。

度重なるリーダーの交代

スティーブ・ザデスキー (Steve Zadesky)

1999年にフォードからアップルに移籍してきたベテラン技術者。iPodやiPhoneの開発において自動車業界の知見を持ち込み実績を残した。プロジェクト・タイタンからは初期の2016年には離脱したとされる。

フォードとアップルつまり自動車とコンシューマエレクトロニクス双方で経験を持っているため、アップルカーの初期コンセプト作りを主導したと考えられる。

アップルにおいてかなりの実績を残していた人物が途中離脱をしたことで、初期の頃からプロジェクト・タイタンは相当困難な計画であることが認識された。

ボブ・マンズフィールド (Bob Mansfield)

1999年にアップルがRaycer Graphics社を買収したことでアップルに加入し、Macのハードウェア開発を担当する上級副社長だった人物。2012年の引退宣言後も、アップルのCEOティム・クック直属のプロジェクトをいくつか担当していた重鎮。

彼がプロジェクトを率いていた時期には、自動車そのものを開発することよりも自動運転技術の開発にプロジェクトのフォーカスを移したとされる。

2019年にプロジェクト・タイタンからは外れた模様。

ダグ・フィールド (Doug Field)

元テスラの技術担当上級副社長で、テスラ・モデル3の製造立ち上げで実績を上げた人物。2018年からアップルカー・プロジェクトに参画したと思われるが、2021年にはフォードに移籍しブルーオーバルインテリジェンスというクルマのスマホ化プロジェクトを率いている。

この経緯からアップルも当然クルマのスマホ化に力を入れていることが裏付けされた。

ジョン・ジャナンドレア (John Giannandrea)

AIと機械学習の専門家として2018年にGoogleから移籍してきた人物。GoogleサーチやGoogleアシスタントの開発に関わっていた。

2021年頃に一時プロジェクト・タイタンを率いていたとされるが、現在もアップルのAI・機械学習担当の上級副社長職についており、全社的なAI戦略策定の一環でプロジェクト・タイタンに関わっていた可能性もある。

ケビン・リンチ (Kevin Lynch)

元アドビのCTOにしてアップルウォッチの開発を主導したことで知られる人物。Doug Fieldが去った後の2021年頃からプロジェクト・タイタンを率いているとされる。

アップルウォッチの開発を成功に導いた際と同様に、アイデアを実際の製品に仕上げる能力だけでなくハードウェアとソフトウェアを高度に組み合わせてアップルのエコシステムにクルマという新たなデバイスを加える役割を期待されていると思われる。

戦略の変更

このように幹部の交代が行われた際には、単にプロジェクトリーダーが交代しているだけではなく、アップルの自動車分野参入の戦略自体も変更されているようです。

当初自動運転レベル5の電気自動車開発からスタートしたプロジェクト・タイタンは、その後一時的に自動運転のシステムだけを自動車メーカーに外販する戦略に軌道修正されていたようです。

最終的には当初の計画よりも現実的な「普通」のクルマの開発に戦略変更し、自動運転の目標もレベル2+と呼ばれる既存の自動車メーカーがすでに市場投入している技術水準にダウングレードされている模様です。

そして現在はアップルウォッチの開発を主導したKevin Lynchがプロジェクト・タイタンを率いており、スマホ化されたクルマがiPhoneやAppleTVなどアップルのエコシステム全体と統合されたものとして開発が進められている可能性が高いでしょう。

このような戦略変更を経て現在は、10万ドル以下の値段で2028年のアップルカー発売を目指しているとされます。

アップルカー予想CG。当初はハンドルもペダルもない自動運転車とされていたが現在は「普通」のクルマを開発中か。

アップルが苦戦しているポイント

ここまでプロジェクトが難航している理由はいくつか考えられます。

自動運転技術

アップルが苦戦する理由として、何よりもまず自動運転の技術的な難しさが挙げられます。アップルがプロジェクト・タイタンを開始した当時は自動車業界全体が自動運転ブームに沸いており、2020年頃には運転手が不要な自動運転のクルマが実現すると多くの人が考えていました。

そのブームの後、多くの自動車メーカーが自動運転車両の市場投入計画を遅らせており、アップルも例外ではなかったという見方ができます。

もちろん自動運転には世界各国の規制もあり、スマートフォンに比べれば世界中で広く製品を発売するのはずっと難しくなります。

バッテリーの独自開発

さらに開発を複雑にしている点として、アップルが独自のバッテリー技術の開発も計画の一部に入れていることが挙げられます。

Macでもバッテリーはアルミ筐体の形状に合わせて設計してあり容量を最大化していますし、iPhoneでもソフトウェアによりバッテリーの健康状態モニタリングの機能などを実装しています。

そんなアップルはプロジェクト・タイタンにおいて、Monocellと呼ばれるバッテリーの開発を目指しているとされています。

通常の電気自動車が小さなバッテリーセルを大量に集めて1つの大きなバッテリーパックを形作っているのに対して、アップルのMonocellは巨大な一つのバッテリーセルを作るという大胆なアプローチです。

当然簡単に実現する技術ではありません。

生産パートナー企業

製品は設計するよりも量産する方がはるかに難しいのもアップルカー実現の障壁になっています。

ソニーが自動車への参入を決断した際も車両の生産は外部に委託する方法を取りました。

アップルも同様に自社工場を持たずに車両の生産を外部パートナー企業に委託することが想定されますが、自動車生産を請け負ってくれるような企業は世界中を探してもそう多くありません。

ましてアップルの厳しい要求に応えられる自動車生産請負企業となると選択は尚更難しくなります。

アップルらしさ

そもそもアップルは自動車業界にイノベーションを起こせるのかという問題もあります。

アップルがそのブランド力を使って車を出すからには消費者は革新的なクルマを期待しますし、究極的にはアップルカーはテスラを超えられるのかという問題に行き着きます。

アップルカー予想CG。高いブランド力を誇るアップルのロゴに見合うクオリティーで車を製造できるパートナー企業は限られる。

生産分野での協業パートナー

アップルカーがこれだけ世間に注目される理由として、生産パートナー探しの話題も外せません。

アップルはiPhoneにしろMacにしろ製品の生産を外部に委託するファブレス企業であり、自動車の生産も外部に委託するというのが既定路線になっています。

実際すでにアップルはプロジェクト・タイタンにおいて具体的にアップルカーの生産パートナーを探し始めている様子がたびたびメディアで報道されています。

初めてアップルカーの生産パートナーとしてアップルと協議を進めていると報じられたのは、韓国のヒュンダイ・キアグループでした。2021年始め頃の報道によるとアメリカにあるキアのジョージア工場においてアップルカーの生産を検討していると伝えれれましたが、ヒュンダイ側から交渉は終了したとアナウンスされています。

ほぼ同時期には日産もアップルカーの生産について協議をしていると報道されましたが、こちらも両者のトップレベルに話が持ち上がる前に協議は終了したとされます。

このほか、欧州自動車大手のステランティスやiPhoneの生産を請け負っているフォックスコン、世界的な自動車製造請負会社のマグナなどの名前が報道されるも、アップルカーの生産パートナーはいまだに決まっていないと考えられます。

アップルの完全なコントロール下で高品質のクルマを量産するのは容易ではないですし、既存の自動車メーカーからするとアップルブランドのクルマを量産して何のメリットがあるのかという問題もあります。

iPhone生産の実績があり電気自動車の生産請負に意欲的なフォックスコンが本命と考えるのが妥当ではないでしょうか。

テスラとの関係

アップルよりも一足先に自動車業界に革新を起こしたという意味で、アップルとテスラの関係も見逃せません。

アップルはプロジェクト・タイタンのスタッフとしてテスラからエンジニアを引き抜いているとされます。

テスラCEOのイーロン・マスクはこの状況を皮肉ってプロジェクト・タイタンはテスラ従業員の墓場だと発言し、テスラからアップルに人材が流出していることに苛立ちを示しています。

また、過去にはテスラという会社自体をアップルが買収する可能性もあったと言われています。

イーロン・マスクによれば、2016年頃モデル3の生産立ち上げ時期にテスラをアップルに売却する話をアップルCEOのティム・クックに持ちかけようとしたものの、その会合自体を断られたということです。

当のティム・クックは別のインタビューで本件に関する直接的な回答を控えて、イーロン・マスクを尊敬していると答えるに留めています。

将来的に両社は、かつてのマイクロソフトとアップルのように強力なライバル関係に発展していく可能性もありそうです。

アップルカー予想CG。アップルはテスラを超える革新的なスマホ化されたクルマを世に出せるかが問われている。

まとめと今後

  • アップルカーは何度も計画が変更されながらも未だに継続しており、アップルの自動車参入は時間の問題と考えられる。
  • 紆余曲折を経て、現在はアップルエコシステムに完全統合されたスマホ化されたEVをテーマに開発されている可能性が高い。
  • 車両の生産はiPhoneと同じフォックスコンが請け負うか。
  • 究極的にはアップルカーがテスラを超えられるかが問われている。

コメント

タイトルとURLをコピーしました