ホンダ新型EVプロローグとZDX。2024年日本発売は?価格、スペック、サイズ、内装、外装を分析。

北米動向

2024年いよいよホンダの新型EVプロローグとアキュラZDXがアメリカで発売されます。

どのようなEVになっているのか見てみましょう。そして日本での発売はあるのでしょうか。

ホンダの電動化戦略

ホンダEVの歴史

これまでホンダが発売してきたEVは実験的な色合いが強いモデルばかりといった印象です。

まずは、プロローグとZDXに至るまでホンダの電気自動車がどのような歴史を辿ってきたのかを改めて確認してみましょう。

Honda EV Plus (1997年)

出典:ホンダウェブサイト

Honda EV Plusは、ホンダが初めて市場に投入したBEVで300台程が生産され主にアメリカのカリフォルニア州でリースされていました。ニッケル水素(NiMH)電池が搭載され1回の充電で170kmの走行が可能な当時としては高性能なEVでした。

Fit EV (2012年)

出典:ホンダウェブサイト

ホンダは、ベストセラーコンパクトカーであるフィットのBEVも市場に投入したことがあります。1100台が製造されこちらのモデルも主にアメリカのカリフォルニア州とオレゴン州でリースされていました。20kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載されており、一回の充電で130kmの走行が可能でした。

Clarity Electric (2017年)

出典:ホンダウェブサイト

Clarity Electricは、1車種でバッテリーEV(BEV)の他に燃料電池車(FCEV)とプラグインハイブリッド車(PHEV)を用意したClarityという野心的なモデルの1グレードです。25.5kWhのリチウムイオンバッテリーが搭載され1回の充電で140kmの走行が可能でした。このモデルもアメリカのカリフォルニア州とオレゴン州においてリースで提供されていました。

Honda e (2019年)

出典:ホンダウェブサイト

Honda eは、小型車の人気が高いヨーロッパと日本をターゲットに開発されたコンパクトハッチバックのBEVです。これまでアメリカの特にカリフォルニア州をメインターゲットとしてBEVを市場投入してきたホンダとしては新たな試みのクルマでした。35.5kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載し1回の充電で220kmの走行が可能でした。

ホンダの完全電動化宣言

そんなホンダが2021年4月に、エンジン車の販売をやめて100%バッテリーEV(BEV)と燃料電池EV(FCEV)専業に移行すると発表しました。移行の期限は2040年までとしています。

トヨタと並んで長らくハイブリッド車で世界に先行していたホンダにEVを開発する技術力があるのは明らかですが、ある意味一度も商業的にヒットしたEVがないのにも関わらずEVへの完全移行を宣言したというのは思い切った決断に思えます。

ましてホンダはクルマだけでなくバイクや船外機にジェットエンジンなどを手掛ける世界最大のエンジン製造会社ですので、普通の自動車メーカーが脱ガソリンを宣言するのとはインパクトも相当違いがあります。

また、地域ごとのロードマップも合わせて発表しています。

  • 中国では、2027年までにe:Nシリーズを含む10車種のBEVを発売し、2035年までに100%EVのみの販売とする。
  • 日本では、2030年までに20%、2035年までに80%のクルマを電動車(BEVとFCEV)にすること。具体的には、2024年に人気軽自動車N-VANのEVと2025年にはN-ONEのEVを立て続けに発売予定。続いて2026年には小型車のEV2車種発売予定とEVのラインナップを一気に充実させる。
  • 北米では、GMと協業して2024年にHonda PrologueとAcura ZDXの2車種を発売。翌2025年にホンダ独自開発モデルである中・大型SUVのEVを市場投入。EV用の電池はLGと協業してアメリカに工場を建設。

つまりホンダ・プロローグとアキュラ・ZDXは、北米市場におけるホンダの100%EV移行の第一歩を担っていることがわかります。

ホンダ・プロローグ

先述の通り、プロローグはホンダが完全電動化を進める第一歩となるEVです。また競合メーカーがEVのラインナップを拡大する中で、ホンダとしても実験的なモデルではなく競争力のある量産EVを用意する必要に迫られており非常に重要なモデルとなっています。

スペック

プロローグはホンダとGMの協業により開発が実現したモデルで、GMのアルティウム(Ultium)プラットフォームを使用しており同じプラットフォームを使うシボレーブレイザーEVと兄弟車になっています。

サイズはCR-Vよりもさらに大きく全長4877mm 全幅1989mm 全高1643mm (192.0インチx78.3インチx64.7インチ)にもなる大型SUVです。さらにホイールベースは3094mm(121.8インチ)と北米版オデッセイよりも長くなっており、広々とした室内空間を実現しています。

搭載されるバッテリーもGMから供給されるアルティウムバッテリーで、プロローグには85kWhの容量が搭載され1回の充電で480km以上の走行が可能と発表されています。充電も155kWの急速充電が可能で10分間の充電で100km走行分をチャージ出来るということです。

ちなみにホンダは2025年以降北米においてテスラの充電規格に移行すると発表しており、プロローグも2025年の移行までに販売される分はCCS規格のポートが採用されるため、テスラのNACS規格にはあとからアダプターで対応する形になるようです。

出力はデュアルモーター版で288馬力という発表がされていますが、シングルモーター版についてはアナウンスされていません。また、先ほどの航続距離はシングルモーター版でのスペックなので、ハイパワーなデュアルモーター版の航続距離は少し短い可能性があります。

エクステリアデザイン

エクステリアは80年代のホンダを思わせるストレートラインを基調としたシンプルなデザインです。

細部に注目するとフロントにはガソリン車を思わせるフロントグリルやリアにはエギゾーストガスパイプを思わせるデザインアクセントがあるなど、できるだけ人々が見慣れたデザインになるようにしている工夫が見て取れます。

ドアハンドルも最近のEVに多い風変わりなデザインではなく、ごく普通で使いやすそうです。

ちなみにホンダロゴはフロントで確認できますが、リアはロゴではなくアルファベットでHondaとスペルが綴ってあります。この点については最近多くのメーカーが取り入れている流行りのデザインアプローチがプロローグでも採用されており、古臭さは感じられません。

また、リアにはホンダの電動車であることを示すコンセントのようにも見えるロゴ「e:」が確認できます。ハイブリッド車の場合は「e:HEV」となりますが、どうやらバッテリーEVの場合「e:BEV」とはならないようです。

ちなみに、ホンダにはeというモデル名の電気自動車もありましたし、中国をメインターゲットとしたe:NというEVのシリーズもあります。日本では軽自動車の人気シリーズがNと名付けられており、N-BOXのEVがN-BOX e:という名前で発表されており、この辺りEVのネーミングが非常にややこしくなってしまっている感があります。

エクステリア全般に言えることは、ガソリン時代の普通のクルマ感をあえて狙っているという点でしょう。最近のEVに多い未来から来た宇宙船のようなデザインとは正反対のアプローチを取っています。

インテリア・テクノロジー

先ほど述べたようにプロローグはエクステリアデザインで普通の車を狙っていますが、インテリアにおいては最新のテクノロジーをしっかりと取り入れられています。

まずはなんといってもグーグルの採用でしょう。Google Built-Inが採用されたインフォテイメントシステムは、ディスプレイこそGMのものを流用していますがソフトウェアはホンダのものに置き換えられています。

11.3インチのセンターディスプレイには、Apple CarPlayやAndroid Autoを使ってスマートフォンを接続することもできます。

出典:ホンダウェブサイト

グーグルを採用したメリットとしてもちろんGoogle MapやGoogle Assistantを車の中で使えるということもありますが、EVならではの機能としては例えばGoogle map上でEVのバッテリー充電場所を事前に指定することで、充電スポットに向かう道中にバッテリー温度などの調整を開始し現地に到着した際に急速充電器での充電をより高速に行えるよう車の状態を整えておくといったことができるようになっています。

まさにスマートフォン的なアプリケーションを車で実現している例といえるでしょう。

このように従来よりも一歩踏み込んだスマホ化がされている一方で、インテリアデザイン面ではやはり従来のクルマから大きく外れないように注意してデザインされている様子も見て取れます。

エアコン操作などはタッチパネルではなくスイッチ類が残っています。デザインもガソリン車でもよく見るイメージでまとめられており、使い方が分からないといった事はまずなさそうです。

出典:ホンダウェブサイト

コックピットは11インチのデジタルメータークラスターが採用されています。

ステアリングはGMのものにホンダのロゴが付いているのですが、違和感はありません。

プロローグではGMの高度運転支援システムであるクルーズが採用されており、ステアリングの操作系もそのままGMのものが採用されています。

なお、ハンズフリー運転が可能なGMのスーパークルーズはプロローグでは採用されていません。

インテリアは最新のテクノロジーとあまりにハイテク過ぎない親近感のあるデザインをバランスよく達成していると言えそうです。

アキュラ・ZDX

ZDXは、プロローグと同じくGMのアルティウムプラットフォームで開発されたBEVでキャデラック・リリックの兄弟車になります。

ZDXの名前はかつて、2009年に登場したアキュラのクーペ風クロスオーバーでも使用されており、10年以上経って復活ということになります。ちなみにこの初代ZDXは、時代をかなり先取りした形で今では当たり前となったクーペ風のクロスオーバーとして登場したため、累計わずか7000台を販売して2013年には生産終了しています。

そんな少しばかり不名誉な歴史を持つZDXの名前を再度リバイバルさせたのは少し驚きかもしれません。

スペック

ボディサイズは、全長5020mm(197.7インチ) 全幅1956mm(77インチ) 全高1636mm(64.4インチ)とプロローグよりも大きな5メートル超えの車体となっています。

ホイールベースについては3094mm(121.8インチ)もあり、アキュラのモデルでは3列シートSUVのMDXと同じレベルの長さがあります。ZDXは前後2列シートのレイアウトなので、3列シートSUV相当のホイールベースというのは室内がかなり広い証拠です。

バッテリーは102kWhの容量があり、シングルモーターのトリムで航続可能距離が520km、デュアルモーター版となるTypeSで460kmになります。

充電は最大190kWの容量に対応しており、10分間の充電で190km走行分の充電が可能です。

なお、デュアルモーターのType Sは最大出力が500馬力にもなります。

エクステリア

エクステリアはあくまでアキュラのブランドデザインを忠実に守っており、5角形のグリルやヘッドライトのデザインなどはアキュラのガソリン車と同じテイストにまとめられています。

日本では、ホンダのフラグシップセダンとして販売されていたレジェンドも北米でアキュラブランドだったため、レジェンドを連想する人も多いかもしれません。

出典:ホンダウェブサイト

リアには、ホンダのEVと全く同じe:のロゴが確認できます。EVをブランド化したアキュラ専用のロゴはないようです。

インテリア・テクノロジー

プロローグが実用性を重視した大衆向けのコンセプトでまとめられていたのに対して、ZDXは走りを重視するドライバーズカーとして開発されています。

コックピットは11インチのメータークラスターや11.3インチのインフォテインメントスクリーンなどプロローグに近いデザインですが、プロローグには無いメーターパネルカバーがスポーティーな雰囲気を作っています。

その他、フルカラーのヘッドアップディスプレイやApple CarPlayにAndroid Autoでスマホの接続ができ、オーディオにはバングアンドオルフセンの18スピーカーシステムが採用されています。

高度運転支援システムはプロローグと同じくGMのシステムが採用されていますが、ZDXではハンズフリーでの走行が可能なスーパークルーズが採用されています。ブランド名はアキュラ・ウォッチ360+となっています。

プロローグ・ZDXの日本発売

ホンダにしてみればGMとの協業で北米におけるEV戦略を開始したのは、自前でEVを開発したトヨタや日産に対しても大きなアドバンテージになっています。

先に紹介した通り、非常に完成度の高いEVを市場に投入することに成功しているのがまず第一点目。

そしてなによりプロローグとZDXは北米にあるGMの自動車工場で生産され電池も北米製のため、現時点でアメリカ政府のEV補助金が出る唯一の日本ブランドのEVとなっています。

プロローグもZDXも明らかに北米がターゲットの車種であることがわかります。

実際今のところホンダのEV戦略上、プロローグやZDXが日本に導入される予定は発表されていません。

ただし、プロローグは2023年11月のジャパンモビリティーショーでホンダブース内に展示されていました。またアキュラZDXの兄弟車に相当するGMのキャデラック・リリックは日本で発売されることを発表済みです。

ホンダ・プロローグやアキュラ・ZDXも市場の声次第で日本に導入される可能性がないとも言えないでしょう。

例えば、大胆な提案になりますが日本ではプレミアムEVとしてレジェンドの名前でZDXを発売しても面白いのではないでしょうか。トヨタのクラウンもクロスオーバーになる時代ですし、レジェンドがセダンである必要はないでしょう。フロントマスクのデザインがレジェンドに似ているのも好都合だと思います。

ホンダは、かつて北米版オデッセイを日本でラグレイトとして売り出した例やエレメントというおもいっきりアメリカ人が開発したアメリカ向けモデルを日本で輸入販売していた例もありますので、完全否定も出来ないでしょう。

気になる値段ですが、プロローグの北米における値段は4万9千ドルからとなっており単純に日本円換算すれば600万円をゆうに超えてきます。ZDXの北米における値段は6万ドルからとなっており、こちらも単純に日本円に換算した場合900万円超えです。

輸入すればそこからさらに値段が上がっていくことになりそうですが、プロローグをトヨタ・bZ4Xの競合、ZDXをレクサス・RZの競合と考えれば、それなりに現実的な価格帯と言えなくもないのが面白いところです。

出典:ホンダウェブサイト

まとめ

  • プロローグとZDXは、ホンダの北米におけるEV戦略をリードするモデル。
  • GMのアルティウムプラットフォームを使って開発されており、完成度は高い。
  • ZDXとプラットフォームをシェアするキャデラック・リリックは日本導入が発表されているが、ホンダはプロローグとZDXの日本導入を発表していない。
  • 仮に日本に導入されても高価格帯になることが想定される。

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